木造軸組み工法には昭和25年に施行された建築基準法に仕様が規定されている在来工法と呼ばれるものと、建築基準法施行前に建築されていた伝統構法と呼ばれるものがある。
この中で我々が「古民家」と呼ぶものは昭和25年の建築基準法の施行時に既に建てられていた「伝統的建造物の住宅」すなわち伝統構法とする。
在来工法は建築基準法にその仕様規定が明記されており、地震時に建物の変形を抑え被害を少なくする耐震的な構造が示されており、それを遵守して耐震改修する。特に在来工法は昭和56年に建築基準法が改正され規定されたいわゆる新耐震基準に合わせた改修を実施することが一定の耐震性の評価をする上では重要である。
一方の伝統構法は在来工法と耐震に関する考え方が異なっており、伝統構法は一般的には免震的構造の建物(免震と制振を併せ持つ構造)とされ、できる限り構造が持つ優れた耐震性を損なわないようにし、劣化部分などはメンテナンスして新耐震基準と同等の安全性を確保しなければならない。本書はこの伝統構法の耐震性の確保をするための手順について定めている。伝統構法は長い歴史の中で幾度かの地震にも耐えてきた実績がある。これは今では手に入り難い大径材の柱や梁、大工の技術がふんだんに使われた残すべき日本の住文化でもある。
ただ、伝統構法は在来工法で増築されている「混構造」と呼ばれる構造になっているものも多い。この場合耐震に関する考え方の違う二つの工法が混在することになり地震時の危険性は増す。そのため混構造の場合、在来工法の要素が多い場合には全体を在来工法へと改修するプランを選択し、伝統構法の要素が多い場合には伝統構法として改修するのが自然であり、それを判断することが実務者には求められる。
「伝統的建造物の住宅」並びに在来工法で増築された「混構造」の住宅の耐震性能評価と改修方法を「伝統耐震診断」と呼称し、一般社団法人全国古民家再生協会で規定した「再築基準」により改修、維持管理、劣化対策を行い、消費者に安全で安心の住まいの提供をおこなうための建物の耐震診断と耐震改修方法をご提供します。
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